東伊豆・富戸港はダイビングスポットとして有名だが、沖釣りも浅場から深海まで多彩なターゲットを有する「穴場」的港だ。
今回紹介するのは航程20分程の近場で周年楽しめるアカムツ五目。城ヶ崎灯台を間近に見ながらのポイントは攻める船も少なく、正に「灯台下暗し」である。
冬〜春は350〜400m、夏〜秋は200〜250mを中心に攻め、深場ではアコウや大ムツ、浅みでは大アラ・ムツ・メダイ・ナンヨウキンメなど、多彩な顔触れが登場。少人数の仕立船の釣り故、出船時間や釣り物も自由自在。ボウズ覚悟で大アラ・大ムツを狙うも良し、船長お勧めの釣りで手堅く土産を取るも良し、浅場・深場の2本立ての欲張り釣りも又良し。あらゆるニーズに対応できるフレックスなスタンスが人気を集めている。
富戸港「ひろし丸」のアカムツ五目が本格的にスタートしたのは昨年1月。数年前に船長が漁でアカムツの大釣りをしたと聞いた我々が「ダメ元」で挑み、正味2時間で0.8〜1.8kgを1〜6本(船中10本)に3.6kg大ムツまで飛び出す「爆釣」。
その後アカムツは船中1〜4本、基本的には型を見れば、のスタンスとなるが、1〜1.5kgのナンヨウキンメ、1〜3kgのアコウ、2〜4kgのメダイ、1〜2kgのキンムツ等が脇を固める「高級五目釣り」が続き、ファンの注目を集める。
そして2月に僕が5.5kg、同乗者が3.2kgの大ムツを仕留めた事で大々的にクローズアップ、更に6月に6kgのアラ、7月にはトドメとも言うべき9.5kgの大アラが浮上。ひろし丸は「中深海の船宿」として名を馳せる事になる。  




  

 仕立なので使用錘の号数は自由だが、基本的に250〜300号錘を使用。
海底を「トントン」と叩くことができる穂持ち〜元の強さ(イコールアクション)とアタリを明確に伝達する敏感な穂先、ウネリに跳ね上がらず、口切れさせないしなやかさ(特にアカムツの場合)を併せ持たなければならない。
250号錘ならマキシムパワー210・240L 、300号錘ならMでもOK。


  

コマンドX4HPにディープセンサーブラックの8号をキャパシティ一杯に巻き込む。
口周りが脆いアカムツ・ナンヨウキンメは充分なドラグ調整と低速気味の巻上げスピードで対応する。


  

  幹糸20〜24号1.8〜2m、ハリス12号1m、鈎ムツ19号の胴突仕掛。鈎数は5本で充分。
回収・再使用が基本故、予備も含め3〜4組用意すればOK。但しサメが多いポイントなので、替鈎は充分用意したい。
仕掛上端にはヨリトリ器具を配す。フラッシュカプセルSタイプは有効ギミックだが、サメが極端に多い場合は取り外す必要もあり。
アコウ狙いでイカキッタン夜光を併用するなら鈎1本置きに配す。


  

  船宿にサバ又はソーダガツオとイカの短冊が用意されているが、その他の物は各自持参。
ムツ・ナンヨウキンメにはサンマ餌、大アラ狙いにはイカの一杯掛けや大振りのイカ短冊等が有効。サンマのカットと鈎掛けは図を参照。
その他の短冊は中心線上なるべく端にチョン掛けにする。

実釣レポート
  「今シーズン、アカムツは1月3日に1〜1.5kgを3人で6本取ったきりです。
その後殆んどやってないのもありますけど。」「でも、そろそろポイントにアコウが上がって来ますから、夕方までやればお土産位にはなるでしょう」とは出船前、日吉博船長談。
4月3日のひろし丸は今年3度目の仕切り直し。
正月2日の初釣りは2時間も経たない内に南西の強風に見舞われ型見ず。
翌日の6本に地団駄を踏み、2月下旬の再挑戦は予報が悪く前夜に中止するが、当日ベタ凪と裏目。
そして今回、前夜の予報は波3mの赤マーク。「2度ある事は…」かと落胆しつつ出船の可否を問うと、「天気図を見ると出船を遅くすれば行けると思います。」との返事。「3度目の正直」に賭け、9時集合を同行者に伝える。
 当日は予報よりも低気圧の通過が早まり、「もっと早くても出られましたね」と船長は苦笑い。何れにせよ、先ずは出船出来て何より。沖に出ると結構なうねりは残っている物の、快晴無風の汗ばむ陽気。先に出た僚船から「アコウを2本獲った」との無線。今日は行けるか。
9時半、400mダチからスタート。
「来ましたよッ!」着底直後に同乗者が声を上げ、ラインを繰り出す。
程無く僕にも大きなアタリ。しかし、「鋭さ」が感じられない。「頭が尖がってそうだよ」とやんわりと「サメ」宣言。一流し目は仲良くツノザメ。このポイントでは避けて通れない税金故、致し方ない。
2投目は昨年正月にアカムツを爆釣した350mダチ。底を取り直した直後に明確、かつシャープなアタリが竿先を叩く。 「これは!」と思って迷わず巻きに掛る。
ほぼ同時にアタリをキャッチした胴の間の同乗者は追い喰いを狙ってすかさず送り込む。この判断が明暗を分ける事に。
口周りの脆いアカムツ故、当日のような大きなウネリはバラシのリスクが極めて高い。一定のペースとテンションを維持すべくドラグ調整と巻上スピードに細心の注意を払う。
巻き始めは巻上げを止める、結構な引き。宙層で一旦収まり、残り100m辺りで再び抵抗する。近くを通過した本船の曳き波で船が大きく揺らいだ時には流石にヒヤリとさせられたが、何とかクリア。
巻上げが終わり、手にしたラインには「軽さ」が。覗き込む海面下には白っぽい影が、次第に大きく、緋色に変わってくる。
「デカいアカムツだッ!」玉を差しながら日吉船長。
「あっ!外れたっ!」
泳ぎ去る事も有るので思わず声を上げるが、この魚はガスが溜まり潜れない。船を寄せて掬い上げ、一件落着。早速検量すると48cm・2kgジャストの船宿記録。
「すぐに巻いて正解ですね。追い喰いを待ったら上がらなかったかもしれない」と船長。鈎穴は大きく広がり、もう一ウネリ喰らったら姿を見られなかったかも。
その言葉を裏付けるように、糸を送った同乗者は途中で口切れ。この状況では一尾を手堅く、が正解だろう。
さあ、これから、と皆意気込んだのも束の間、突然南西が吹き始め、あと何回流せるか、危うい状況。
3流し目は舳先にも待望のアタリ。が、これも途中で口切れ。胴の間の2発目も同様に獲れない。正にウネリ憎し。
6投目を入れた12時。ますます強まる風に「この流しで限界ですね」と船長からラスト宣言。
程無く悪戯するようなカラスザメのアタリ。無視して待つ。同様の第2信、3信、4信。我慢我慢。
「そろそろ…」と船長から声が掛った瞬間、ガクガクッ!遂に待望のアタリ!
一尾目同様、底近くでは結構な暴れっ振り。残り100mから再び動き出す。ラスト50mで前とオマツリしたが、何とか無事に釣り上げたのは42cm・1.3kg。一回り小振りでも同じ位引いたのは一番上に喰ったからか。下にはカラスがズラリ連なり、正にラストチャンスを物にした格好。個人的には大満足。
結果は船中2本の「独り占め」だが、アタリは全員に有り、海況が穏やかなら昨年同様の爆釣だったかも。今後も大いに期待できる、富戸沖のアカムツ五目だ。


ひろし丸 富戸港
 TEL 0557-51-0964

仕立 3名¥30,000より (餌・氷付)
交通 R135〜富戸八幡野線で富戸港。魚市場構内を通過し、行止り迄進むと船着場。