5月15日、岡山より遠路遥遥訪れたメンバーを含む6名で南伊豆・手石港の龍宝丸より今期2度目のベニアコウ狙いで出船する 。
初挑戦の面々はベニアコウとの対面を、リピーターは10kgの 「大台 」キャッチをそれぞれ胸に秘め、それぞれ釣り座に着く。各自創意工夫を凝らした仕掛に縦方向にカットしたスルメイカの短冊を配し、いざ石廊崎沖1100mへ。
ポイントまでの40分強、船長情報は4月10日に初の10kg超(11kg)が上がった事、4月中旬から潮向きが悪く苦戦した事 、連休前後は天候に恵まれず殆んど出船できなかった事 、現状潮は幾分良くなった事等 、期待と不安が50:50の内容。
龍宝丸の投入は舳先から順 。
潮の遅速にも依るが 、仕掛が着底するのに10〜15分を要する 。この時間を使って次回投入する仕掛に餌付け 、2投目以降は前回使用した仕掛を掛枠に巻き直す。
船長発表の 「水深 」を100m以上超えてもラインは斜め前方に走り 、スプールの回転がスローダウンする気配も見られない。
上潮がかなり速い様だ 。 錘の着底を確認したのは 「水深 」プラス200mのラインを繰り出した辺り 。全員の仕掛が底に着いたのを見計らって船長は道糸が真っ直ぐ立つ様に操船するが 、幾らも経たない内に再び前方に走り出してしまう 。
こうなるとラインが立っている僅かの時間が勝負 。短時間でも錘が海底をトントンと叩く状態を演出すべく 、底ダチを取り直す。
幾度目かの 「チャンス 」が訪れ、底を取り直して程なく 。一目で 「本命 」を確信できる明確なアタリが竿先に 。 「来たよっ! 」操舵室の船長に右手を挙げて合図 。
スプールをフリーにして錘を着底させ 、更に幹糸間隔分を送り込む 。 以降巻上の合図まで竿先にテンションが掛った分、順次リリースして待つ 。追い喰いのアタリが確認できれば更に幹糸分を強制的にスプールから引き出して送り込むが 、アタリがない状態で這わせるとホラアナゴやサメなど、お呼びでない魚が鈎掛りして要らぬ手間が増えるだけ 。
「流し」は着底から30分程度だが 、早い段階でアタリをキャッチしたため 、待っている時間が実際よりもかなり長く感じられる 。 「やっと」船長の合図が出て、舳先から順に巻上 。コマンドX10のドラグを「船が上がった時には巻上が止る位」に調整 、舳先である事と当日のウネリを計算し2速で巻く 。
ラインは斜め前方に走っているのでロッドの曲がりは然程感じられない物の 、モーター音と巻上のペースからかなりの負荷が掛っているのが解る 。時折竿先をグヅグヅと揺さぶり、期待が膨らむ 。
「ベニアコウなら500m辺りで一際強い抵抗が有って巻上が滞る」初挑戦の同乗者に講釈を一下り。注目の500m付近で 「予定通りに 」竿先が揺れ 、緩めのドラグ故に度々巻上がストップする 。
一人 、又一人、巻上が終わり、空の仕掛を回収してゆく。
筆者以外に唯一アタリをキャッチしていた胴の間がサメに舌打ちした時点で残り300m。全員注目の中 、ペースを保った巻上が続く 。 残り100mを切ると今度はガスの溜まった魚体が上潮の抵抗を受けて再び巻上が滞ると、斜め前方に走っていたラインが一気に浮き上がり始めた 。
ここで初めて巻上スピードを上げてフケたラインを一気に巻き取る。カウンターが000になるのとクライマックスシーンが訪れたのはほぼ同時 。腕組みをして遥か前方を見つめる 「パフォーマンス 」をする間も無く 、真紅の大輪が紺碧の海面に弾ける 。
「ありゃあデカいぞっ!」同乗者から声が上がる 。拳を突き上げ勝利のポーズ 。 錘の存在を感じさせない 「軽さ 」と浮き上がった魚体に掛る 「大きな抵抗 」を噛み締めるように一手、又一手、仕掛を手繰り寄せる 。
「デカイ!絶対に10kg以上だ!」ベニアコウ歴十有余年 、自己記録9.5kgの釣友がギャフを用意しながら興奮気味に言い、掛け声もろとも抜き上げる。
それにしてもデカい 。
自己釣果以外にも8〜9kgクラスは何尾となく見て来たが 、この魚は明らかに一線を画するサイズだ 。 すぐさま秤を引っ張り出す。ズッシリと両手に掛る重さ 。目盛が示すのは自己記録を3kg、船宿記録を1kg上回る85?p・12kg。遂に 「夢の10kg超 」を達成したのだ。
言葉では到底表現しきれない喜びと同時に 、個人的にはこの釣りに 「未来 」がほぼなくなった寂しさも感じ 、暫し放心状態 。(贅沢?) 「今日はもう充分です 」と一流しで早々に納竿し、以降 「ギャラリー 」に徹するが…
初っ端から大物が出て 、船中に期待感が漲った物の 、この日は 「毎日潮方が変わるけど 、今日は特に悪い 。あの潮でよくアタリを取ったよね 。 」と船長に言わしめるバットコンディション 。
3投目に胴で12kgのクロダラをカニのオマケ付きで浮かせた以外これと言った釣果もないまま定刻1時を迎え、筆者の「一人勝ち」となった次第 。
潮方次第ではまだまだ大型の期待は充分だが、坂倉天良船長は「5kg以下が釣れたらポイントを休ませる」という。
早い時期の挑戦をお勧めする 。
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