茨城県最北の港、平潟はグルメ・旅番組では「アンコウ鍋」、沖釣りでは「関東圏のマダラ釣り」でメジャーな存在。
 特に「第十五隆栄丸」は同地に於けるマダラ釣りのフロンティア的存在で、各種媒体に度々登場しており、関東はもちろん、東海地区や、遠くは近畿地区からも釣人が訪れる。 魚偏に雪と書くその名から、冬の魚のイメージがあまりにも強いが、釣期は例年6月スタート、12月末クローズ。最も海況が安定し、数が釣れるのは8月のお盆前後という真夏のターゲットである。
 代名詞とも言える「白子」が膨らむのは9月下旬以降だが、身が美味なのはそれ以前。産卵が終わる年明け以降は痩せて味も落ち、もう一枚の看板、オキメバルと取って変わる。 ポイントは航程1〜2時間の水深150〜300m。起伏の激しい荒根を攻め、根掛かりを恐れては釣りにならない。(根掛かりばかりでも同様だが。)
 マダラのサイズは3〜5キロをアベレージに、大型は6〜8kg、時に10kgクラスも顔を出す。
 夏は中型の数釣り、秋以降は大型狙いが基本だが、初期でも7kg以上が混じるので油断は禁物。
 混じりは1kg前後を中心としたバラメヌケ、40〜50cm近い大型のチゴダラ(ドンコ)を筆頭に、2〜3kgのヤナギメバル、小型のメダイなど。時に10kgを越すミズダコが釣人を驚かせる事も。
 また、ポイントは異なるが、平潟沖では同時期に水深400〜500mの荒根で3〜5kgの大型バラメヌケ狙い(アブラボウズとキンキが混じる)も可能だ。  




  
使用錘は300〜350号。ロッドは300号クラスの深海専用竿をセレクトする。
 船長が2.4m以上のモデルを勧めるのはマダラの激しい引きを見た目で楽しみつつ、ウネリの大きい外海で置竿での適度な誘いとバラシを抑える効果を期待する、が理由だが、ここで注意しなければならないのはあくまでも底叩きができる7:3アクションベースの竿であること。胴調子竿はこの釣りには向かない。
 素材的にはカーボンよりも強度(素材の粘り)面で優れるグラスがお勧めだが、同じグラスでも素材復原力が低いオールソリッドの竿は前述の「底叩き」に難があり、この釣りを筆頭とした深海釣りには今一つである。
 「マキシムパワー240M」「ボトムファイター250M」などがお勧めのモデルだ。


  

 マダラポイントの水深は150〜300m。PE8号を400m巻ければ一応釣りは可能だが、高切れなどのトラブルを考えると水深の倍位は巻いておきたい、が本音。 更にマダラの引きと重量に負けないパワー、サメが回遊した際の高速巻き上げ(魚が付いた状態での)が要求されるため、やはりコマンドX4HPが必要だ。
 「ニューディープセンサー」の8号をキャパシティ一杯に巻き込んでおけば、タラだけでなく、大型バラメヌケ釣りにも、糸巻量・パワー共問題無く対応できる。


  

 図は岡本使用の太め・長めのマダラ専用設定。船宿準備の仕掛は少し短めだ。  仕掛上端には「キャラマンリングI型」と(又は「ヨリトリリング」。この場合はケミホタルをセットすると集魚効果もアップ。)「ヨリトリフィン半円型」「ヨリトリチェーン7×5」を連結し、ヨリトリ効果と共に仕掛を這わせる際の中錘の役目も兼ねさせる。 マダラには発光体が特に有効なため、「フラッシュカプセルS」か「キャラマンライト夜光」を忘れずにセットする。更に各鈎のチモトにはケミホタルルミコ、餌と一緒に10〜15mm幅にカットした「イカキッタン夜光」と、ピカピカギラギラにする。
 こだわりは細軸の鈎。低活性時には明らかな差が出る。逆にハリスは必要以上に細くせず、大型に備えたい。
 鈎数は10本以内の取り決めだが、5本で充分。短いスタンスで根回りをくり返す攻め口故、手返し良く全ての回を投入する事が最終的には釣果に繋がる。

  

 船準備はイカ短冊だが、年間を通して最も安定しているのはサンマ。半身の斜め半割りとし、尾と胸びれ、それぞれ付根の固い部分を利用して鈎掛けすれば外れずらい。軽く塩をし、たっぷりの「旨味調味料」で味付けするのがマル秘テクニックだ。
 サンマに比べるとムラが有るが、スルメイカのワタ、イワシ、小イカなどが威力を発揮する場合もある。これらは各自で用意する。 スルメやシイラが釣れたら、その場で身餌として使用するのも効果的だ。



 投入は船縁に仕掛を並べ、ブザーの合図で艫から順に行う。ここで間に合わなかったり、トラブルが発生した場合、一回休み、は深海釣りの常識。間違っても後から投入などしない事。
 錘が着底したら糸フケを完全に取り、一旦錘を底から離した後、再度着底させ、そこからロッドの長短・硬軟やウネリの高低、釣座の位置などを計算に入れて50cm〜1m位の棚を取り、船の上下で錘が海底をトントンと叩く状態をキープしてアタリを待つ。起伏の激しい荒根を攻めるから、小まめなタチ取りが欠かせない。
 マダラのアタリは明確。見落とすことはまず無い。アタリがあったら鈎間隔分を送り込んで追い喰いさせるのがセオリー。タラでない場合も操作は全く同じ。既に魚が掛かった、若しくは餌が取られた空鈎ではタラは釣れない。次の餌を棚に送り込まなければ第二信はないのだ。但し、船長が「ここは送り込むな」とアナウンスしたポイントでは指示に従う事。 巻上は基本的にドラグを効かせた中速をキープするが、サメが回遊し、上層でマダラを奪い喰われる場合はラスト40m位を最高速で巻き上げるケースも有り。
  激しい抵抗が海面近くまで続くが、最終的には浮き上がってしまうので、サメさえいなければ慌てることはないが、希に泳ぎ去る個体もあるので、大型はギャフでの取り込みが無難だ。
 マダラの口には細くて鋭い歯が内向きに並んでいるので鈎外しの際には要注意。
 釣人の特権である刺身を堪能するには必ず鰓の付根にナイフを入れ、バケツの海水で血抜きを施してからクーラーに収める。また、デッキに付着した血は放置せず、速やかに洗い流しておく事。  但し、サメが回遊している際は血を海に流すのは「コマセ」をするようなもの。クーラーの中で放血する、船が移動する際にバケツの水を捨てるなどの配慮が必要だ。




 タラ、イコール「鍋」のイメージだが、釣人の特権と言えるのが「刺身」だ。放血し、水氷でキッチリと冷蔵して持ち帰り、当日、又は翌日食すると、タラに対するイメージが一変する。薄造りに引き、サッと湯がいた胃袋の細切りと肝を添え、モミジおろしを効かせたポン酢で食すのがベスト。秋以降は雄なら「白子ポン酢」も楽しめる。
 二日目以降の生食は「昆布締め」がお勧め。 加熱調理の場合、和・洋・中、あらゆる料理に活用できる。鮮度の良い内に一塩した身を冷凍保存すると味の変化も少なく、重宝。 保存食としては味噌漬け、粕漬けなどがあるが、簡単で美味なのが「三五八漬け」だ。 塩・麹・米を3・5・8の割合でブレンドした東北地方の漬け物の素がスーパーなどで販売されている。本来は野菜を漬ける物だが、魚を漬けても美味。切り身に「素」をまぶして一晩置き、洗い流すだけという簡単さ。冷凍保存も可能だ。




 昨シーズンは夏場の回遊群がなく、「開業以来最低」と船長に言わしめた不漁年だったが、今期はオキメバル不調の際に2本立てで凌ぐ等、早くから好調の兆しがあった。
  7月頭までは不安定な水温に左右され、釣果も上がったり下がったりの繰り返しが続いたが、7月15日、「2.5〜8?sをトップ30、スソ24本。バラメヌケ混じり」の爆釣。
 8月に入って釣況は安定し、スソで数本、トップ十数本の例年並みの釣りが続いている。
 10kgオーバーの大物も既に何本か出ており、今後も大いに期待できそうだ。


第十五隆栄丸
TEL 0293-46-3980

第三隆栄丸
TEL 0293-46-2133
仕立て制

乗合 ¥20,000
 イカ短1パック・氷付き
 限定定員にて出船